Proposed by Yujiro Nishiyama, Japan.
第1章:単関節運動から始まる「再教育」
私たちの身体は、複数の関節や筋群が協調して動きを作り出します。
しかし、局所性ジストニズム(Local Movement Dystonism:LMD)のように運動プログラムの誤学習が起こると、
複雑な動作の中で“どのタイミングでどこをどう使うか”が曖昧になってしまいます。
単関節リトレーニング(One-Joint Retraining:OJR)は、
この複雑な制御を一度分解し、最小単位である「1つの関節の動き」を通して再教育を行う方法です。
第2章:OJRの定義
単関節リトレーニング(OJR)とは、単一関節の動きを用いて、
脳の誤った運動制御プログラムをリセット・再構築するための再教育法である。
OJRは、従来の筋力トレーニングやリハビリとは異なり、
「どのタイミングでどの筋をどの順序で、どんな意識で使うか」を学び直すことを目的とします。
第3章:OJRを支える3つの理論的背景
- 神経可塑性(Neuroplasticity):脳は学び直す力を持っている。
- 相反神経抑制(Reciprocal Inhibition):一方の筋を動かすと、反対側は自然に抑制される。
- 注意と意識の方向性(Focus of Attention):意識の置き方で筋活動が変化する。
これら3つの理論がOJRの基盤となっています。
特に、「動かす意識」と「動かさない意識」のバランスを再構築する点が特徴です。
第4章:実践の原則
- 1つの関節だけを意識して動かす
- 力を抜くことよりも、必要最小限の出力を保つ
- 「動かさない部位」や土台の安定を優先して再学習する
- 速さや負荷よりも「正確な再現性」を重視する
この段階で得られた動きの安定が、最終的に複数関節の協調動作へとつながります。
第5章:OJRがもたらす変化
OJRを実践したクライアントの多くは、
「力が抜ける」「指が巻き込む」「思い通りに動かない」といった症状から、
いつの間にか“意識せず動ける感覚”を取り戻していきます。
それは単なる運動能力の回復ではなく、
脳が動きを“再定義”するプロセスです。
第6章:英語版定義
One-Joint Retraining (OJR) is a re-education method that uses single-joint movement
to reset and rebuild the motor control system distorted by maladaptive learning.
It emphasizes minimal movement, precise awareness, and the restoration of reciprocal coordination.Proposed by Yujiro Nishiyama, Japan.
結び ― 動きを通して、脳を再教育する
OJRは「動きを再学習させる最小単位」であり、
その積み重ねが、LMD改善の基礎をつくります。
私たちは、動きの中にこそ「脳の再教育の鍵」があると考えています。
そしてその鍵を開く第一歩が、単関節リトレーニングなのです。
